Gustav Mahler(1860-1911)の交響曲第1番ニ長調「巨人」 は、マーラーが1888年(28歳)の年に作曲した初めての交響的器楽作品であり、また最初の交響曲でもあります。
若年期の作品であるにもかかわらず、深く豊かな叙情性やドラマティックかつ壮大な構成力 、極めて緻密であるとともに斬新な管弦楽法など、その後彼が創り上げていった孤高のの音楽世界の萌芽がすでに初々しい楽想の中に溢れています。
近現代を代表する交響曲の一つであるとともに、交響曲史上重要な作品の一つと言っても過言ではないと思います。
そしてマーラーの交響曲は、その豊穣で美しい弦楽器群の表現力は言うまでもありませんが、管打楽器奏者にとっても宝の山と言えるほど魅力的な作品が多くあります。
マーラーを吹奏楽で
その様に管楽器奏者によって、マーラーの作品は重要でありながら、残念なことに日常、吹奏楽に携わる人々にとってマーラーの交響曲を演奏する機会がなかなか持てないのが実情です。
なぜならばマーラー・スコアの弦楽器群のニュアンスを、管楽器で表現することには極めて大きな困難を伴うからです。特に中期・後期の交響曲になってくると、その困難さは増大します。
しかし初期の作品群の弦楽器群オーケストレーションは、比較的シンプルです。
そこで、初期の交響曲の中から選ばせていただいたのが、第1番ニ長調「巨人」でした。
編曲には、2011年12月から1月のおおよそ2ヶ月間をかけて取り組み、2012年2月19日(日)に東京オペラシティ・コンサートホールで開催された海上自衛隊東京音楽隊第51回定期演奏会において初演させて頂きました。
この吹奏楽全曲版は、オリジナル・スコアの4管編成をそのまま使用し、チェロ、チェレスタ等を加えた大編成の編曲となっています。
完璧主義者 マーラー
作曲家によりますが、一旦創作した内容を変更し新たな「稿」を書く作曲家がいます。
その変化には、構成や調・楽節などの大きな改訂からオーケストレーションの部分的な変更まで大小
あります。
マーラーは完璧主義者でした。
やはり彼も、この交響曲で綿密に推敲を重ねています。
現在この交響曲には第3稿まであり、それぞれに違いがあります。
また、出版されてからもいくつかの「版」が存在しています。
当初、私はヴァインベルガー初版のドーヴァー版で編曲し、演奏させていただきました。
しかし、現在コンサートで一般的に使用されているのはユニヴァーサル版です。
よって、今回の編曲はこのユニバーサル版に準拠しています。
東京佼成ウインドオーケストラと「巨人」
昨年の春、東京佼成ウインドオーケストラ事務局から楽譜の貸し出しについてご依頼がありました。第118回定期演奏会で「巨人」をプログラミングしたいとのことでした。
同秋、東京都新宿区にある佼成ウインドの練習場で初版の音出しをしていただきました。
しかし、現在の版で耳慣れていらっしゃる団員の皆様からユニヴァーサルでやりたいとのご提案をいただきましたので了承致しました。
2014年2月16日(日)、東京都豊島区池袋の東京芸術劇場にてユニヴァーサル版初演が行われました。
指揮は、本年4月、神奈川フィルハーモニー管弦楽団常任指揮者に就任された川瀬 賢太郎氏、新進気鋭の指揮者です。
楽譜に続いてCDも発売になります!
私は、残念ながらコンサートへは伺えませんでした。
と申しますのは、同日同時刻から開催された東京音楽隊第53回定期演奏会(東京都新宿区東京オペラシティ)の指揮のため行けなかったのです。
リハーサルもその前の週行われたのですが、気になりながらも、これもかぶってしまっており聴いておりません。
さて、以下はご案内です。
楽譜とCDの発売についてお知らせします。
最後に
吹奏楽でマーラーをやりたい!
そんな方々が、この編曲版をコンサートや音楽教育の現場で使っていただけるならば
こんな幸せなことはないと思っています。
吹奏楽で、マーラーの青春の歌に酔ってみませんか!
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