前回は、西洋音楽を演奏する上で、それが「アクセント言語圏の音楽」であることを認識した上で
アナリーゼすることをお勧めしました。
今回は、シャコンヌ形式(パッサカリア形式)における「主題声部と変奏声部」の取り扱い方について
ビュアしてみたいと思います。
主題と変奏の関係を知っておく
第1組曲 Ⅰ シャコンヌにおける、主題声部と変奏声部の楽器編成は、下表の様になっています。
次に、作曲上の全般的特徴についてです。
1. シャコンヌ主題による変奏曲形式を使用したことから、ポリフォニックな作曲技法の占めるパーセンテージが高い。
2. 中間部に当たる第8変奏から第9変奏にかけて、シャコンヌ主題の音程関係を逆方向にとって配置した「反行主題」が使われ、伝統様式に対するホルストの強いこだわりが感じられる。
3. 第10・11変奏では、変ホ長調のドミナント音(Bb音)によるバッソ・オスティナートが使用され、コーダに至るカオスを作り出している。
4.コーダに当たる第13変奏では主音(Eb音)のオスティナート上で、ホモフォニックな変奏が行われている。
対位法への対処
さて、無駄な音の一切ないポリフォニックで作曲されたこのシャコンヌです。
対位法(ポリフォニック音楽の作曲技術の一つで、いくつかの「声部」と呼ばれる「旋律のみで作曲」していく技法)で書かれた主題と変奏の関係を、良く理解して演奏する必要があります。
それでは、前回のブログでの2つ目の注目ポイント
2. コルネットの旋律は、上行し、下行する「山」の稜線ラインになっている
について見ていきたいと思います。
下の楽譜、9小節目のアウフタクトからです。
コルネットの旋律ラインはまず上行し、5度下への跳躍の後、さらに下行していく「山」の稜線ラインになっています。
シャコンヌ主題は、「反行」形を除き、次のような旋律ラインとなっています。
前半で「山」形を作り、後半では変ホ長調のドミナント音へと上昇しています。
ここで一般的な音響特性として、「高い音>低い音」
つまり、「低い音より高い音の方が遠くへ響き、結果よく聞こえる」ということを考慮しますと・・。
上に、ダイナミクス(デュナーミク)の変化を書いてみました。
一般的に、演奏の現場では
音響特性だけでは浮き立ってこない「聴感的な自然さ」を「補完」してやる必要があります。
特に対位法で書かれた作品を演奏する場合には、声部の独立性を確保するため、このような配慮も必要です。
では、第1変奏はこのように演奏すべきなんだと言っているのかというとそうではありません。
私は、対位法への対処法の一例をお話ししたかっただけです。
音楽は始まったばかり、まだ霧の中から聞こえるようにソット・ヴォーチェで演奏したい。
素晴らしい!
シャコンヌ主題ではまだ不明だったトーナリティ(調性)が、8小節目3拍目で初めて変ホ長調!!
で鳴るから、やや大きめで響かせたい。
素晴らしい!!
いろいろな解釈があって良いと思います。
そこが、音楽のまた、演奏の面白さ、たまらなさだと思います。
「合奏法のアイデア」 〜 ホルストのシャコンヌから
次回は、「リズムの感じ方を変えてみよう!」です。
コメントをお書きください