R.シューマン(1810-1856)
ドイツ・ロマン派を代表する作曲家の一人です。
30歳くらいまではピアノ曲を中心に作曲活動を行っていた彼ですが、あるジャンルを集中的に創作し始めるのが1840年です。
まずこの年は「歌の年」と呼ばれ、「詩人の恋」「リーダークライス」「女の愛と生涯」などドイツ・リートの名作を次々と作曲しました。
ちなみに翌年1841年は「交響曲」、1842年は「室内楽」の年となっています。
浮遊する調性感
歌曲集「詩人の恋」の冒頭を飾るこの曲
[美しい五月に] Im wunderschönen Monat Mai
調性は嬰ヘ短調なのに、主和音が一度も登場せず
最後は属和音で解決しないまま終わる和声進行。
伴奏のみの動画がアップされていましたので、ご覧になってみて下さい。
美しい季節と愛する人への想いを語った曲でありながら、とても不安定で浮遊するような感覚に襲われます。
二度の内部転調を伴う主部は、歌詞とリンクして美しく喜びや憧れを歌っています。
ここでは、嬰へ短調の平行調であるイ長調の主和音(ラドミ)がきちんと登場します。
しかし、何回か回帰する冒頭の2小節がなんともいえず「心に刺さる」のです。
ピアノで弾いてみると、1小節目は長調へ、2小節目のドミナントは短調への指向性が強く感じられます。モヤモヤです。
歌詞に登場する「彼女」とはもちろん妻クララ・シューマンですが、この曲を初めて聴いたときからずっと、彼女との悲劇的な別れを予感させるような、またシューマンの心の内部を垣間見たような不思議な気持ちになります。
夭折の名テノール / フリッツ・ヴンダーリヒ
フリッツ・ヴンダーリヒ(Fritz Wunderlich, 1930年9月26日 - 1966年9月17日)
『ヴンダーリヒは2オクターヴを超える輝くような澄んだ声で知られ、また当初より自然でわざとらしさのない演技、かつ高い技術を決して失わない歌い方で知られた。
並外れた音楽家としての集中力と才能を持ち、それを役に投じることができた。
今日に至るまで20世紀最大のテノール・リリコではないかと目され、少なくともドイツの歌手史上最も
重要な歌手の一人と見なされている。
ルチアーノ・パヴァロッティは1990年にインタビューで、歴史上もっとも傑出したテナーはと聞かれ「フリッツ・ヴンダーリヒ」と答えている。』
(Wikipediaより)
その早すぎる死が本当に惜しまれる素晴らしい歌声です!
「詩人の恋」全曲がアップされています。
https://youtu.be/EZLjf_m6j0A
素晴らしく美しい五月に
ありとあらゆるつぼみが開き
僕の心の中にも
愛の花が咲いた
素晴らしく美しい五月に
あらゆる鳥が歌い出す
僕は彼女に打ち明ける
僕の憧れを
僕の望みを
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